当事者専門職とピアサポーターの違いは?(ピアサポート研修①)

東京都で今年度開催された「ピアサポート研修」に参加してきました。講座は、全6日あり、昨年夏頃に基礎と専門が2日ずつ。今年1月下旬にフォローアップ研修が2日間ありました。

ここ2・3年は、コロナ禍の影響で、なかなか集合研修が開催されず、グループワークもオンラインが続いていましたが、久しぶりに対面でグループワークをして、同じ時間を参加者同士で共有できたことは、今後の仕事への励みになりました。

この研修を受けて思った事、知った事を何回かに分けて、連載で書いていきます。

当事者専門職とピアサポーターの違いは?

 これが、今回のテーマです。

講座の募集要項では、「ピアサポーター」と「専門職」を選択するようになっており、事業所長と、どういう事なのか迷った覚えがあります。わたしは、身体障害の手帳を所持しているけれど、業務内容は相談支援でした。今回記事の最後に書きますが、大田福祉工場では、支援者自らが「わたしも障害があります。ピアサポーターです」と名乗らない文化があります。そのような事業所にいたから、「ピア」と「専門職」を分けていた事に違和感を覚えました。

実際に研修会場に行くと、既に支援者として専門知識・経験値で支援に当たっている当事者が多く、わたしが抱いた疑問と同じ思いをしていた人が複数名いた事を知りました。専門職側も、「どうして自分たちとピアを分けるのか?既に、主体的に支援業務を行っている障害当事者の同僚たちに、ピアサポーターになってもらって、ペアで支援に当たる事がイメージできたい」と話していました。

厚生労働省のテキストや、時折目にする新聞記事で、「専門職とピアサポーターが協働し、支援していく」というキーワードが、講義中に度々出てきました。

 講義の中で出された好事例は、相談支援の現場で、中途で障害を負った利用者へ、ピアサポーターが共感力を発揮し、専門職が利用者支援と同時にピアのケアも行い、チーム(ペア)で行った支援で、利用者の生活環境が良い方向に進んでいったと紹介されていました。

 共感力という点で考えれば、大田福祉工場にいる数名のピアサポーターも、好事例と同様の効果を発揮できるかもしれません。しかし、大田福祉工場は「自分の障害は、オープンでもクローズドでも、どちらでも良い」というスタイルを長年続けてきました。自ら障害をカミングアウトする人もいれば、黙ったまま10年・20年と勤務している人もいます(支援職に限らず)。これには、正解はありません。

 そんな大田福祉工場でピアサポーターの存在意義はあるのか、研修全てを終えた今でも、答えが見えてきません。

ただ、健常者従業員は、障害への苦しみ、回復していく過程などは、「想像」はできるけれど、リアルに「共感」は難しいかと思います。その部分が強みとして、この工場の中でピア効果を活かせるフィールドがあるならば、来年度以降、別の従業員がピアサポート研修を受講する意義はあるかと思っています。

 次回以降は、(たぶん)講座の中で感じた事の中から、抜き出して思うところ、実現可否を考えてみながら書いていきたいと思います。

 

執筆者:柴田 静